クリスマスマーケット 2025.12.24 「どうぞ、よい夜を」 来店したときより随分と穏やかな顔をした「お客様」を見送ったイワンは、吹き抜けた冷たい風に首をすくめて店内へ戻ろうとした。くるり、踵を返しかけて、近くの角から出てきた人影に足を止める。「……青海さん?」「あら、ちょうどいいときに来れたみたいですわね」 ことと、と靴の踵を鳴らして
お祭りお嬢様のシュリンピアお祭り記 2025.12.07 この記事は、シュリンピアの2025年アドベントカレンダー企画で執筆したものです。昔から、「同じお題で人それぞれ違うものが出てくる」という企画が大好きでした。写真を提供して、それをお題に文章を書く、という企画の主催を隔週ペースで2年続けていた時期があったほどです。お題にする写真を撮るのも、参
幽世の花 2025.09.07 障子越し、淡い春の日差しが差し込む部屋で、一人の青年が静かに正座している。やや日焼けしているもののイグサの香りを残した畳の上には、白地に青の釉薬がつややかな陶器の器に水が張られていた。青年は手に持ったハサミで花の茎を切り、花器に据えられた剣山へ花を生けていく。次の花を手に取り、ふと鼻先をかすめた
露青の日記_02 2025.08.15 ご近所の田中さんからスイカをいただいた。大層立派なのを丸ごと一玉、姉上曰く「2人で食べなさい」とのこと。わたしの腹ではあまり涼を食べられないのだが……姉上は書き置きに「わたくしの分も残しておいて」と書いてきた。ずいぶんわんぱく扱いされている気がする。切り分けて少しかじったら、甘くて体の火照
露青の日記_01 2025.08.11 誕生日を機に、日記を書くことにした。日付は飛び飛びになるだろうし、続くかもわからないが、思い付いたときに思い付いたことを書く。買ったばかりの日記帳は少し書きづらい。本の形をしたものに、横書きというのも慣れない。だが、自分の書いたものがひとかたまりの手に取れる形になると考えるとくすぐったいも
シュリンピア入国2周年&暁姉弟誕生日 2025.08.10 入国当時は職業訓練校に通っていて、朝に授業が始まる前にあわただしくアカウント作成して、休み時間のたびにLTLをうろうろしていた気がします。帰りの電車で診断メーカー回して、出てきたキャラ案で代理として青海を作って……。2年もたつ間に、青海は自我を得て「キャラクター」になったし、わたく
咬傷 2025.07.02 ※もしイワンさんが青海を咬んでしまうことがあったらIF「……ッあ、」 出かかった苦鳴が、痛みで喉に詰まる。前腕へ深々と食い込んだ牙が、ゆっくりと傷を広げないように抜けていくのを、唇を噛んで堪えた。 真っ青な顔をして口を閉じることもできずに震えているイワンさんの肩に、無事だった手を添える。動
UFO 2025.06.27 ある年の、雨期もそろそろ終わるころ。 夜空を見上げていた白いワニは、月でも星でもない光を見た。「あれは……なんだ?」 ひとりごちると、隣に蔓を延べていた朝顔が揺れる。 フラフラと不規則に動き回った光は、やがてワニの真上にぴたりと止まった。カ、とスポットライトのようにひときわ強い光が降り注ぎ、白い
人狼の愛娘 2025.06.05 さかなのにがにが.さんのお誕生日祝いで書いたお話(2025)です。人狼探偵事務所とニカちゃんのクロスオーバー作品になります。※▶をクリックorタップで本文が表示されます1.万年筆と探偵帽「あ、ニカちゃん」 会えてよかった、とへらりと笑った男に、ニカはぴょんと階段の最後の段
りんごのケーキ 2025.06.05 ※さかなのにがにが.さんのお誕生日祝いで書いたお話(2024)です。青海とレプリカさんのお話です。「レプリカさーん」 和装の女が、きょろきょろとあたりを見回しながら呼びかける。いないのかしら、と口では言いつつ、顔にも声色にも、不安の色は微塵もない。「お渡ししたいものがありま