UFO

 ある年の、雨期もそろそろ終わるころ。
 夜空を見上げていた白いワニは、月でも星でもない光を見た。
「あれは……なんだ?」
 ひとりごちると、隣に蔓を延べていた朝顔が揺れる。
 フラフラと不規則に動き回った光は、やがてワニの真上にぴたりと止まった。カ、とスポットライトのようにひときわ強い光が降り注ぎ、白いワニの鱗が輝く。
 おや、と思っているうちに、ワニは自分の体が浮き上がるのを感じた。
「待ってくれ、どこへ行くんだ」
 わたわた、と四肢を動かすが、ワニはみるみるうちに地面から離れ、光の柱の中を引き上げられていく。
 すると、朝顔の蔓がひょろりと持ち上がり、ワニの方へ伸びた。
「つかまってくれって? キミまで道連れに……」
 朝顔はワニの言葉など聞かない素振りで、さらに蔓を伸ばす。
「千切れてしまうかもしれないよ」
 ワニが言うと、朝顔は一瞬動きを止めて、それからぐっとワニが浮かぶより早く蔓の先を上に伸ばした。前脚でつかむような位置ではないことに戸惑ったワニが、蔓の先を見上げると、蔓はひゅるりとワニの口吻に巻き付いた。
 ――余計なことばかり言うお口は、ふさいであげましょうね。
 細く、すぐにでも千切れてしまいそうな朝顔の蔓のはずが、ワニはもうそれ以上口を開くことができなかった。クン、と上に向かって引っ張り上げる力と、朝顔が引きとめる力が拮抗して、ワニの動きが止まる。
 しばらくそうして引き合って、朝顔の根が土から引きずり出されそうになったころ。ワニが前脚を蔓に添えて、どうしたものか、いっそこのまま一緒に、と考え始めたところで、降り注ぐ光が弱まった。
 ゆっくりと地上に戻されたワニは、口に巻き付いた蔓をそのままに、さっきまで自分を連れ去ろうとしていた光をちらりと見上げる。それは先ほどと同じように、フラフラと不規則に動いて去っていった。
 蔓は一度だけぎゅっとワニの口吻を締め付けてから、するりとほどけてそっぽを向く。
「……怒っているのかい」
 ワニがそっぽを向いた朝顔を追いかけて、移動した。朝顔はそれでも意地を張って花(おもて)を伏せたが、ワニが鼻先で持ち上げるとくすくすと笑う。
「悪かったよ」
 ――あら、それはなにが?
「キミを置いていこうとしたこと」

6/24がUFO記念日だったそうなので。

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