にがにがさんが冥の誕生日に素敵なイラストをくださったので、それに乗っかる形で小話を書きました。
お誕生日、なにをあげよう、と散々考えていたのに、本人がちっともいつもと変わらないものだから、ニカは拍子抜けした。
「冥くん、これ、プレゼント」
「え、なんかあったけ今日」
変わらないどころか、誕生日自体を忘れていたらしい。
「誕生日? ……ああ、そういえばそうだ、俺秋生まれだったね」
「お誕生日聞いたら教えてくれたのに、なんで当日覚えてないの」
「あんま気にしないんだよ……日付だって、多分この辺って感じだし」
冥曰く、海で細かく日付を気にしているのは人間か、よほど神経質なやつくらい、とは言うものの。彼の様子を見るに、こんなにざっくりとしているのは冥くらいであるという可能性も十分に有り得そうだった。
「ね、これ開けてもいい?」
呆れ半分、ニカが「いいよ」と頷けば、冥は大きな手で包みを解いていく。ばりばりとラッピングを裂いてしまいそうなのを抑え込むように、ゆっくりとテープを剥がして紙を開けば、現れたのは鮮やかな青い毛糸地だった。
「お、きれい。ニカちゃんの目の色だ」
「……」
それを狙って選んだ色のはずなのに、見た途端に「きれい」と一緒に自分を連想されて、ニカは斜めに視線を落とす。ずるい、とつぶやいたのはしっかり聞こえていたらしく、しかし首を傾げるだけで冥は突っ込んでこなかった。
「おぉ……マフラー……」
やわらかな毛糸の感触を両手に捧げ持って、冥は緩む頬へマフラーを当てる。
「あったけ」
うっとりとマフラーに懐く冥に、ニカは少し頬を染めた。相手のことを考えて考えて選んだマフラーを、わかりやすく気に入っている様子が見られるのは気分の悪いものではない。
「もしかして、これニカちゃんの手編み?」
「違うよー! でもニカの想いが籠った特別なマフラーだよ! ……大事にしてね」
「そりゃもう。……陸の寒いの苦手って言ったの、覚えててくれたんだ」
「びっくりしたんだもん。氷水の中も平気で泳ぐのに!? って」
たたまれていたマフラーを広げて、冥はそれをニカに渡した。
「俺に一番似合う巻き方、教えてくれる?」
糸目をゆるりと薄く開いて、冥は笑う。ニカの手が届くようにぐいと腰をかがめ、早く、と促した。
どこへでも泳いでいってしまいそうなシャチを、捕まえておくための首輪を。わかっているのかいないのか、彼は持ち主自らの手でかけてほしいとねだる。
「ニカ、おしゃれな巻き方とかわかんないよ」
「いいの。ニカちゃんが巻いてくれたら、それが俺に一番似合うから」